2011年牡牛座の下半期の占い

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埼玉県川越市には「蔵づくりの街並み」と呼ばれる、重々しくも美しい街並みがあります。道に軒を連ねる商家がみな、蔵のような作りになっているのです。
明治時代に、この辺りを大火事が襲ったとき、蔵だけが無事に焼け残ったために、母屋も蔵のような作りにするようになったのだそうです。
「小江戸」と呼ばれるほどに栄えた街は、今も有名な観光地となっています。

日本の木造家屋はすぐれた美しさを持っていますが、紙と木でできた家はいかんせん、燃えやすく、古い街並みを多く残すのは、難しかったようです。
ヨーロッパ諸国に古い街並みがよく残っているのは、それらが石でできていることに多くを負っています。
実は、ロンドンやヴェネツイアなども、古くは多くの木造建築を抱えていました。しかし、大きな火事を教訓に、街は石で再建され、結果、世界的に有名な古い街並みが、今も生き生きと息づいています。

それまでのやりかたを捨てて、新しいやり方を採る。これは、なかなか難しいことです。
人間の誇りも、安心も、みんな、「過去」によって、できているからです。
過去の実績や栄光が、その人のプライドや人格の骨格を作ります。
安心は、イコール、「慣れ」「馴染み」です。
ですから、過去のやり方を捨てるとき、人は、プライドを傷つけられたり、大きな不安を抱えたりします。

冒頭に挙げた「街並み」の話は、「過去のやり方を捨てる」という英断が、その後、長く続く繁栄をもたらした例です。
自ら捨てたというよりは、圧倒的な出来事によって「捨てさせられた」という面もあると思いますが、とにかく、慣れ親しんだ木造を離れ、蔵のような構造の家を作り始めたわけです。
街並みの外観は、大きく変化しました。ですが、「街」そのものは、その後長く生き延び、現代に至ります。手法を変化させたことにより、街はそのまま、生き延びたのです。
変えることにより、変えずに済むもの。人間は、個人史においても、そうした決断を下すことがあります。

2011年下半期以降、牡牛座の人は、「今までのやり方を手放して、新しいやり方を採用する」という時間の中にあります。
この時間は年内だけのものではなく、来年の初夏まで続いていくプロセスです。
この「手放す」プロセスは、決して、前述の例のように奪い取られるようなものではなく、喪失感に苛まれるようなものでもありません。
むしろ、画家が思い切って画風を変えるような、力強い創意と情熱の元に、行われるはずです。
「奪われてから、与えられる」ということではなく、「自ら選び取り、自ら昇華する」のです。
川越やロンドンの街並みのように、この選択により、なにかが、変わらずに命を保ちます。

具体的には、転職や結婚、独立、出産、引っ越し等々、後で容易に思い出せるような、「転機」と呼べる出来事を、牡牛座の多くの人が、体験するのだろうと思います。
牡牛座の人は、物事をきちんと積み上げて、しっかりした形に安定させることを得意とします。
ですから、変化に際しては、強い不安を抱くこともあります。
引っ越しや転職などのテーマに直面すると、周囲が心配するほど、なかなか腰を上げなかったり、「やっぱりその必要はないのかも」と、元の状態に戻りたがったり、自分で自分をもてあましてしまう傾向が見られます。
それでも、ひとたび「変えよう」と決断すると、そこからは断固、前に突き進みます。こうなると、誰にも牡牛座の人を止めることはできません。
特にこの時期は、変化がとても「大股」です。遠い距離をこえたり、普段なら越えがたいハードルをこえたりと、これまでの人生のスケールでは使ったことのない物差しを使って、未来を計画することになるだろうと思います。

時期的なことを少し申しますと、この6月という月が、牡牛座の世界では大きなターニングポイントです。木星という、約12年に1度巡ってくる「成長の星」が、牡牛座に入るからです。
これによって、2012年の初夏まで、あなたの可能性の畑は徹底的に耕され、新しい種を蒔かれることになります。
突然、前述したような、転職や結婚などの計画が持ち上がったり、あるいは、既に予定していた一大計画に着手する、という人もいるはずです。
6月半ばから8月頭は、経済的な変動も大きい時期で、新しい収入の途を得たり、大きな買い物を決断したりすることになりそうです。
8月から9月半ばは、小旅行や出張など、短期的な移動が多くなるでしょう。知的好奇心を大いに刺激され、貪欲に学べる時です。コミュニケーションも活性化しています。
9月下旬から11月上旬は、引っ越しや家族に関する変化があるかもしれません。会社の配置換えなど、「いつもの環境」が変わるタイミングです。「内」と「外」の出入りが激しくなるでしょう。
11月中旬以降、2012年の初夏までは、「ワガママ」が大切になる時期です。自分が何をやりたいのか、どうしたら楽しいのか、ということを、貪欲に追求していくためのタイミングとなっています。
このこともまた、前述の「やり方を変える」ための力となります。

愛情関係については、公私を問わず、人生における大事な変革期に当たっているため、人間関係や恋愛についても、変化が起こりやすいはずです。
婚約や結婚、出産など、大事な恋愛の「節目」を経験する人も、少なくないだろうと思います。
あなたの「キャラクター」が変化を遂げるため、人との関わり方や、関わっていく相手のタイプも、自然に変化していくでしょう。
フリーの人は、10月以降、大いに出会いのチャンスが訪れるでしょう。
8月下旬から9月中旬も、最初は静かもしれませんが、あたたかな追い風が吹く時期です。

「現実」という言葉は、思い通りにならない厳しさ、という意味で使われることもあります。
この「思い通り」とは、すなわち、安心していたい、誇りを保ちたい、という気持ちなのかもしれません。
「現実」の、「現」という文字には「死に対して、この世に生きていること」という意味があるのだそうです。
いま、目の前にあるもの。そこで、生きていくということ。
牡牛座の人は、この下半期から来年にかけて、とても丁寧に、力強く、「生きる」ということを成し遂げていきます。
捨て去られたように見える、古いやり方も、決してただ投げ捨て去られたのではなく、その魂はちゃんと、新しい世界に、物語として生きています。
蟹やエビが脱皮を繰り返しても、もとより大きく鮮やかな色になりこそすれ、決してそのかたち自体は、変わってしまわないのと同じです。