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「働かざる者食うべからず」。
このフレーズを、会話の中でしばしば用いる人がいました。
彼女は結婚して、会社を辞めたばかりでした。
会社での仕事は大変辛いもので、理不尽なことも多く、心身ともに疲れ果てていた彼女は、パートナーの薦めもあってしばらく専業主婦をすることにしたのですが、こんどは「自分で稼いでいない」「自分のお金がない」ことについて、日々、自分を責めるようになってしまいました。
生活費を渡されても「私のお金ではないから」と、自分のものは買わず、「私は役立たず」「稼ぎがない」と、ため息をついているのでした。
彼女の考えは極端なように思えましたが、その気持ちも、なんとなくわかる気がしたのです。
私たちは本当は、生まれてきただけですでに、十分に、そこに「ある」権利を、有しているはずです。
私たちの生き方はあくまで、人との関わりの中で、独自に作り上げられていくものであるはずなのに、そうした個別の関わりや結びつきを無視して、「私は役に立たない」「生きている価値がない」と、自らの人生をがんじがらめに縛り上げてしまう人が、本当に多いように思えます。
2012年下半期の牡牛座が直面しはじめるテーマは、「所有」と「他者」です。
所有する、ということは、牡牛座にとっては生涯にわたるとても大切なテーマでもあるのですが、この時期は特に、そのことにスポットライトが当たります。
稼ぐこと、食べること、好きな物を買うこと、家族を養ったり、誰かに養われたりすること。
自分が「これは自分のものである」と主張し、それを自分のものとして用い、守ることは、同時に、他者に対してそれを宣言することでもある、という意味で、すでに人間関係の一部と考えることができます。
自分のものは、誰かに勝手に使われるわけにはいきません。
誰かのものを、勝手に使ったら怒られます。
あの人はゼイタクだとか、こんな格好はみすぼらしいのではないかとか、所有物に対する「他者の評価」というものもあります。
なにを、どのくらい、どう所有し、消費するか、ということは本来、その人の個人的な欲求を充たせばいいことのはずなのに、どこからか、「人間関係」と結びついていきます。
そして、時に窮屈になったり、おかしな具合にねじれたりする場合もあるようです。
自分が欲しいと思い、自分を充たすもの。
牡牛座の人はたいてい、それがよくわかっています。
身体の中から自然に自分のニーズを決定し、それに向かって自然に動いていける人たちです。
その感覚を狂わせないまま、他者との関係の中に、柔軟にニーズを満たしていく、ということが、この時期の目標となるのではないかと思います。
この時期は基本的に、とても豊かな時期です。
欲しいものが手に入るでしょうし、収入が拡大する人も多いと思います。
何らかの「財」を手に入れたとき、同時に、「誰かとの関係」をも引き受けることになります。
たとえば、会社から給料を得ることは、会社との関係を引き受けているということになります。
新しいバッグを買うような場合でさえ、それを持ったときに受ける人からの無言の評価とか、家族からの意見なども一緒に「引き受けていく」ことになります。
他人からあれこれ言われたくなくて、欲しいものを手に入れない人もいます。
見栄を張って高いものを身につけて、それを自慢するような人もいます。
いずれも、「何かを所有する」ということと、それにまつわる人間関係とのあいだで、ゆれ動いているわけです。
おそらくこの下半期から、牡牛座の人は、他者との関係の中で、どんなふうに自分のニーズを満たしていくのか、というそのことを、模索していく時期に入っていくと思います。
そこではまず最初に「自分は本当はなにが欲しいのか」を、人間関係と切り離した状態で考える作業が、必要となるはずです。
時期的なことを少し申しますと、まず、6月から7月は、大きな買い物をしたり、あるいは、収入がどんと増えたりする人が多そうです。
買い物については、前述の通り、自分が心から納得できるかどうか、がとても重要な判断基準となりそうです。
条件はそろっているのに、どうも心にぴったりこない、というものを手に入れて、あとで不満が残ることはけっこう珍しくありません。
6月中は特に、この「心に沿うかどうか」がポイントです。
7月から8月にかけては、非常に忙しい時期となります。
やらなければならないことが多い上、周囲から頼まれる事も多くなるでしょう。
この時期に体調を大きく崩す人もいるかもしれませんが、これは、ここから長い距離を走る上で必要な「メンテナンス」のような意味を持っています。
転職を考える人も多いはずですが、「職業を変える!」というよりは、「自分に合った就労環境を確保する」という意味合いが強そうです。
9月から10月頭は、人間関係が焦点となります。
人との関わりが活発になり、新しい出会いも多く、プレッシャーを感じることもあるかもしれませんが、ストレートに自分をぶつけていくことで、貴重な関係を築けます。
11月から12月半ばにかけて、遠出する機会が増えます。
出張や旅行など、足を伸ばした先で、印象的な出会いがあったり、宝物を手に入れたりすることができそうです。
年末、新しい目標を得て、フレッシュな意欲が湧いてくるでしょう。
愛情関係については、非常に真剣な星回りとなっていきます。
「愛されること」「相手にしてもらえること」に、ついつい意識が向いがちだった人も、この時期から「お互いの関係において自分が持つべき責任」について、考えがふかまっていくかもしれません。
特に10月以降は、フリーの人も、お見合いなど、長期的な関わりを視野に入れた出会いの気配がしてくるでしょう。
カップルも、パートナーシップを長期的に運営する上で必要なことを、リアルかつシビアに考えていくことになりそうです。
恋愛に追い風が吹くのは10月、11月末から12月半ばです。
「何が欲しいのか」「どのくらい欲しいのか」ということは、十人十色、千差万別です。
「平均的に、人間にはこれくらいのものが必要である」ということは言えても、それはあくまで「平均値」に過ぎません。
小食の人もいれば大食漢もいますし、太りやすい人もいれば、太りにくい人もいます。
それと同じで、他のものについても、「欲望の内容」には、大いに個人差があります。
人は、「自分が欲するのと同様に、他人も欲するだろう」と感じがちですが、決して、そうではありません。
だからこそ、人間関係の側だけから「自分に必要なもの」を考えてしまうと、およそ自分に適したかたちにはならなかったりするわけです。
「人からなんと言われようと、自分はこれが欲しい」ということと、人との関わりを大切にすることは、両立が難しい場面もあるかもしれません。
でも、相手が欲しているものと、自分が欲しているものとに対して、できる限り平等にその「差」を尊重していく限り、きっと、自分自身を潤し、大切な人の生活をも潤す、ということは、叶わないものではないと思うのです。