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「カントがいった如く、物には皆値段がある、
独り人間は値段以上である、
目的其者である。」(岩波書店刊『西田幾多郎随筆集』より)
物はすべて、人間の手段として価値を持つけれど、
人間だけは「目的そのもの」であり、何かの手段などではなく、
比較することも、値段を付けることもできない。
哲学者・西田幾多郎が幼い愛娘を亡くした折、
その痛切な気持ちを綴った随筆の一筋です。
人は、目的そのもの。
この、考えてみればまったく当然のことを、
私たちは日常的に、見失いがちです。
たとえば、世に言う「自分探し」のゴールは
主に「自分に合った生業を探すこと」となりがちです。
「将来の夢」が、将来なりたい職業のことだと解釈されます。
他人や社会から評価されるような活動を「自分の使命」と感じ、
その「使命」を知ることこそ「自分を知る」ことと信じている人がいます。
たくさんのお金を稼ぐことを「成功」と表現する時代には、
人間もまた、値段のついた「もの」なのでしょうか。
私たちが自分自身を、何かに役立つ「手段」ではなく
「目的そのもの」だと感じることは
日常生活の中では、かなり難しいような気がします。
2013年下半期、蟹座の人は、
自分自身が「目的そのもの」であることを
再発見するよう促されます。
「誰かの役に立つ自分」や「誰かに愛され認められる自分」というふうに、
外側からの力で実感できる「自分」から、
脱皮し始めることになります。
自分が自分である、ということをもう一度自分の手で
「選択しなおす」プロセスが、蟹座の世界に発生するのです。
蟹座の人は、感謝されることを喜びます。
人に受け入れられることが嬉しくて、
時には、自分の欲求を全部隠してでも、
誰かの力になろうとします。
そうした心の働きが、いつのまにか、
自分の本源的な欲求や望み、楽しみや創造性などを
固く冷たく凍らせてしまうことがあるのではないでしょうか。
さらに。
年齢をかさねればかさねるほど、私たちはさまざまな責任を背負い、
他者の期待に応えるべく動くようになります。
その途中で、やはり、自分の時間や自分の愛することを
見失ってしまうことが多いように思います。
2013年の下半期は、そんなふうに、
時間の中でいつのまにか見失った自分を
再発見することになると思うのです。
これは、以前の自分にもどる、ということではありません。
そうではなく、たとえば『みにくいアヒルの子』のように、
むしろ、もっと自分らしい自分に「生まれ変わる」ような体験です。
みにくいアヒルの子は、なんとかして集団に受け入れられようとしますが、
むしろ、のけ者にされるばかりです。
でも、最終的にたどり着いた先で、
自分が今まで重ねてきた努力が
ある意味、見当違いだったことがわかります。
「他のものになろう」としたときに見つからなかった場所が、
何かになろうとするのをやめたとき見つかる、ということも
もしかしたら、あるのではないでしょうか。
時期的なことを申しますと、
まず7月は、もどかしさと新鮮さの入り交じった、
かなりドタバタのタイミングとなりそうです。
新しいことがどんどん始まるのですが、
その一方で、待たされたり、ボタンの掛け違いが起こったりと
何となくズレや混乱が多い時期なのです。
でも、そんな混乱も21日を過ぎるとスッキリ収まり、
そこから、ぐんぐんスピードを上げていけるでしょう。
7月下旬から8月になってみて初めて、
7月の半ばに起こっていたことの「重要な意味」を
発見する人も少なくないかもしれません。
いずれにせよ、7月から8月の中で、
あなたは自分が大きく変化するのを感じ、さらに、
貴重なチャンスに遭遇するはずです。
8月は特に、変化を選択する季節となっています。
ファッションや生活習慣など、ごく個人的なことを変える人もいれば、
自ら大きな勝負に打って出る人も少なくないでしょう。
初めてのことに挑戦する人もいると思いますが、
ここで着手したことは、このあと時間をかけて展開してゆき、
人生における重要なテーマの一つとなる可能性が高いと思います。
9月から10月半ばにかけて、経済面で動きが出てきます。
新しい収入の途を得たり、大きな買い物をしたり、
投資など「勝負」に出る人もいるはずです。
一方、この時期は純粋な喜びを追及できる時期でもあり、
自分の欲求を満たすために、
少々「贅沢かな」と思えるような選択をすることになるかもしれません。
10月後半からは、フットワークが良くなっていきますが、
懐かしい場所に出かけたり、昔の恋人に会ったりと、
感情が大きく動くような「外出」をする人が多いでしょう。
11月以降、さらに「人と会う」機会が増えていきます。
ここから2014年3月までのあいだ、素敵な出会いがあったり、
一対一の人間関係が大いに熟していく季節となっています。
特にこの11月は、コミュニケーションに熱がこもりそうです。
12月、居場所や家族に関して、動きがある時期です。
引っ越しなど、物理的な変化が起こる可能性もありますし、
家族の誰かが人生の転機を迎え、
そのサポートで忙しくなる人もいるでしょう。
年末はいつもよりもずっと、
家族や自分を取り巻く人々、環境について
意識を向けていくことになりそうです。
愛情関係については、
2012年の10月から、真剣に「愛を学ぶ」時期に入っていますが
2013年下半期はそこに、
個性の成長、キャラクターの変化という要素が加わり、
愛し方や大切な人との関わり方が、ぐんぐん変わっていきそうです。
自分の中にある弱さ、たとえば依存心や恐怖心、不安感などを見つめ、
それを自分の力で克服しようと試みる人が多いでしょう。
この「克服」のプロセスは、現実の愛の体験の中で行われ、
一つ一つのシーンにおいて、自分の心と対話し、闘う、
というかたちで進んでいくだろうと思います。
今まで自分の中にある心理的なワナによって失ったものがある人は、
ここで、そんな喪失をもう二度と繰り返さずにすむような、
丈夫な「愛する力」を育てることができるはずです。
愛に追い風が吹くのは9月から10月上旬です。
さらに言えば、2013年6月から翌年7月までは、
人生におけるとても大きな転機の時期ですので、
この期間に大切な人と出会ったり、結婚したりする人も
少なくないでしょう。
何が自分を喜ばせ、何が自分を充足させるのか。
何に夢中になれて、どういうことが楽しいのか。
こういうことは「自然に、あたりまえにわかっているもの」とされがちですが
むしろ、真剣に努力して見つけに行かなければならないテーマなのです。
少なくともこの時期の蟹座の人たちは
それを必死に自問自答しながら世界中を探しまわり、
やがて、それを見つけることになるはずです。