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「卒意」という言葉があります。
これは、茶道の世界の言葉だそうで、
「用意」に対応します。
主人がお客を迎えるために心込めて「用意」しても、
お客の方にそれに応える「卒意」がなければ
そのお茶の席は、完成しない、のだそうです。
一般に、
自らなにか行動を起こすことを「能動」、
誰かが起こした行動を受けて動くことを「受動」、
と言います。
上の「卒意」という態度は、
このどちらにも当てはまらないような気がします。
主人のもてなしを受け止める、という意味では
あきらかに「受動」なのですが、
そこに、何らかの積極的意志が働いているわけで、
その点だけを見れば「能動」に近いようです。
いわば、能動的受動、とでも言えるかもしれません。
楽器はそれぞれが、すばらしい音を持っています。
でも、誰かがそれを奏でなければ、
静まりかえったままです。
さらに、誰かがそれを奏でたとしても
楽器は、本来自分が持っている音でしか鳴りません。
ならす人がどんなに
「パイプオルガンのような音を出したい」と思っても
それがマリンバであれば、マリンバの音しか出ません。
上記「用意」「卒意」の組み合わせは
演奏者と楽器の関係に通じるものがあるようです。
鳴らしているのか、鳴っているのか、
いずれにせよ、
双方が同じくらいの力を発揮し合って初めて、
そこに「なにか」が創造されます。
おそらく、2009年の後半から2010年前半まで、あなたは
「用意」の世界で闘ってきたのではないでしょうか。
自ら行動すること。
自分から誰かに働きかけること。
意志し、それを実現しようとすることが
内面から外界への矢のようなベクトルとなって
常にあなたを突き動かしていたのではないかと思います。
一方、2010年下半期のあなたがテーマとするのは
一転して「卒意」の方ではないかと思うのです。
なにかを受け止めてそれに応え、響いていこうとする、
「能動的受動」の世界に、
あなたは、一歩踏み込んで行くのではないでしょうか。
たとえば、先生の授業を受けるとき、
ただお利口さんに座って話を聞くだけではなく
授業が終わってから、先生に近寄り
オフィシャルな場から少し離れたところで
突っ込んだ説明を聞くことがあります。
そのとき、先生は
授業の場とは少し違った対応をしてくれると思います。
もっと経験に基づいた、もっと血と肉の感触のする言葉を
発してくれたりすると思います。
あるいは、「みんなに向かっての話」ではなく
あなただけに向かっての話、ですから
あなたの名前を呼び、あなたの今の状況に合わせて、
もっと話を深く奥行きあるものに
変化させてくれるかもしれません。
2010年下半期の獅子座が経験するのは
そんな性質のことではないかと思います。
遠くから礼儀正しく話を聞いて納得するのではなく
個人としての意識を強くして、
受け止めるための一歩を踏み出すのです。
こんなふうに書くと、ひどく抽象的で
何のことかさっぱりわからないかもしれません。
ですがおそらく、7月が終わり、8月が半ばになる頃には
あなたにもこの話の意味が
うっすらとでも、見えてくるだろうと思います。
というのも、
「一歩踏み出さなければならない理由」
「能動的受動を選択しなければならない理由」
が、この夏に、持ち上がるからです。
この夏のあなたは、
強いあこがれを心に抱くことになると思います。
なにかとても手に入れたいものや、
どうしても近づきたい存在、入っていきたい遠い世界に、
突然、触れることになると思います。
そしてさらに、「その世界に触れるためには何が必要か」
が見えてきます。
ですがこれは、奇妙なことに、
机上の勉強や一般的な経験では、
ちょっと得られないなにかなのです。
たとえば、誰か高名な先生に教えを請うたら
「一度自分の家に帰って、
あなたのおじいさんとじっくり三時間、話をし、
さらに、3晩続けて自分の犬と過ごしなさい」
と言われた、というような展開が想像されます。
遠い世界に触れようとしたときに、
それよりもまず
「自分の内側」「大切な人との関わり」
を確かめるよう、促されるのです。
誰かに説明してもらってわかるようなことではない、
生身で勝ち得るしかない「体験」です。
その「体験」自体が、
人に説明できるようなものではない、
とても強力な意味を持っているわけです。
2010年の下半期は、そんな「体験」を
身をもって果たすことになると思います。
ここには、深さと奥行きと真実がありますが
正解や客観や普遍的正義はどこにもありません。
幾多の芸術が、
相対的な正しさと絶対的な正しさの差を描いていますが
この時期のあなたは、自分の五感を通して
さらに、頭脳と心を通して
その差を実感し、その差によって
誰かに強い影響を及ぼすことになるのだと思います。
時期的なことを少し申しますと、
まず、7月から8月は、前述の「憧れ」に触れる時です。
遠く旅する人が多いだろうと思いますし、
その地で強いインパクトを受けたり、
なにかしら、大切なものを発見して
再訪を誓うことになりそうです。
一度訪れただけで通り過ぎてしまうような、
そんな薄い旅にはなりそうもありません。
8月から9月にかけては、さらに、
とても活発なコミュニケーションが行われます。
メールや電話、手紙などの流量が多くなり、
そこに情愛や情熱がたっぷりと込められます。
2009年の後半からなにかを学び始めている人は、
誰かが素敵な「先生」になってくれるのかもしれません。
情熱と愛のある先生は、誰にとっても、得難い存在です。
あなたの内なる好奇心と向学心が、
いくらでも新しいことを吸収させてくれるでしょう。
9月半ばから10月は、
「居場所」にスポットが当たります。
この時期、引っ越しやリフォームなど、
家庭環境を変える人も多そうです。
情熱的に環境を刷新し、気持ちも入れ替わる時です。
11月は非常に創造的な時期となっています。
心から打ち込めるテーマに出会う可能性もあります。
子供がいる人は、
子供に傾けるパワーが増大するかもしれません。
そこから学ぶことがとても多い時期です。
12月、あなたの「責務」に変化が起こります。
やらなければならないことの性質が、
少し変わってくるのです。
日常生活の矛盾を解決するための転職を決意したり、
異動を希望したりする人も少なくないはずです。
疲労をため込んでいた人は、
ここで盛大にそのマイナスを解消することができます。
体調不良を感じたら年末の多忙な時期でも、
思い切って休養をとっていいと思います。
この年末は、物事の動きがすこぶるスローモーで、
周囲もあまりリズムがかみ合わない時期なので
無理して進もうとする必要がないのです。
年末、新しい希望がふと、
心に湧くかもしれません。
この希望は、夏に抱いた憧れと
しっかり結びついている気配があります。
愛情関係については、とても濃く深い時期です。
自分と相手にしか解らないようなことが段階的に起こり、
そのプロセスを通して
お互いの間に深い根を持つ大樹が育ちます。
人に見せびらかせるような、あるいは、
テレビのCMやドラマに描かれるような、
形から入る「恋愛」を期待している人にとって
この時期の出来事は、
複雑すぎるように感じられるかもしれません。
でも、本当の愛情関係にはどこか
抜き差しならない命のやりとりのようなものが
厳然と、含まれています。
そのプロセスを踏まない関係は、
簡単に壊れてしまうことも多いのです。
11月は、フリーの人もカップルにとっても
とても情熱的な時期に当たっています。
2010年の上半期は、
獅子座にとって、自分を根底から試すような
強いチャレンジの時期に当たっていました。
さらに、この時期、「自分」に強い関心を持った人も
少なくなかったはずです。
これを受けて下半期は、
他者に相対したとき、遠い世界に出かけたとき
自分は一体どういう力を持つのだろう?
ということに焦点が当たるのだろうと思います。
そこでもまた、
今まで知らなかった新しい自分の一面に
気づかされ続けるはずですし、
さらに、「相手」も
徐々に、深い胸の内を見せてくれるはずだと思います。