2013年射手座の下半期の占い

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「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉があります。
「貴重なものを手に入れるには、危険を避けて通れない」
という意味で用いられます。
この「虎穴」は、虎がいっぱいいる穴の、
食い殺されるかもしれない「危険」を象徴している、
というふうに捉えられています。
でも、私は個人的に、もう少し違った寓意も読み取れる気がしています。

それは、ほかでもない「その場所」に行かなければ、
決して手に入らないものがある、ということです。
たとえば
「恋に溺れた人間にしか、本当の恋はわからない」とか
「本場の味を味わわなければ、
その料理を知っているとは言えない」とか言われることがあります。
日本には、日光東照宮の美しさをたたえて
「日光を見ずして結構と言うなかれ」という言い方もありますが、
「本当にその世界の中に入り、
どっぷり浸かりきらなければわかり得ない、
非常に特別な価値というものが存在する」
という意味に捉えることもできるような気がするのです。
これはもちろん、私の個人的な解釈というか、空想の域を出ません。
でも、世の中にはたしかに、そういうことがあるような気がします。
親の言うことをおとなしく聞いて青春時代を過ごした人が、成長して
「若いときにもっと自分の意志で行動し、
少しは道を踏み外したりしておくのだった」と嘆くことがあります。
周囲がそのゆくすえを危ぶむような大失敗をしつつも見事立ち直り、
「あの経験が無ければ、今の私は無かった」と頷く人もいるわけです。

2013年下半期、射手座の人が何か危険な目に遭う、
と言いたいわけではもちろん、ありません。
ただ、この下半期から一年ほどのあいだ、射手座の人は何らかの形で、
「ほどよいバランス」とか「中庸」といったものを超え、
ある方向に、計器が振り切れるような思い切った「没入」を
体験するのではないかと思います。
たとえば、「我を忘れて創作に打ち込む」とか、
「誰かのために少々無茶をする」とか、
「すべての肩書を放棄して世界を放浪する」とか、
前述のように「何もかも忘れて恋に溺れ込む」とか、
そういったイメージの体験です。
先生や親の言うことをしっかり守るだけの「優等生」には
とてもできないようなことを、選び取ることになると思うのです。

たとえば、現在では広く検査や治療に用いられる「心臓カテーテル法」は
血管から心臓へと管を入れる医療技術です。
この技術の最初の実験体となったのは、医師本人でした。
非常に危険だと考えられ、周囲から強く制止されたにもかかわらず
研修医フォルスマンは情熱を抑えきれずに、
自分で自分にチューブを差し込み、レントゲン撮影を行い、
見事、実験を成功させ、後にノーベル賞を受賞しました。
私たちが日ごろ、ごくあたりまえに受けとめていることの中にも
危険を度外視した「挑戦」の果てに実現したものが多々あります。
もちろん、むやみに無謀なことを勧めているつもりはありません。
でも、「安全・安心」の向こう側でしか実現しないことがある、ということも
人生における、一つの真実だと思います。

時期的なことを少し申しますと、
まず7月は、少し緊張感が緩む、穏やかな時期となりそうです。
人のレスポンスを待ったり、誰かの中にあるややこしさにつきあったりと、
じっくり「他者」に向き合うことが必要になるかもしれません。
また、長いこと借りていたものを返したり、
逆に、貸していたものやなくしたと思っていたものが
不意に返ってきたりする可能性もあります。
7月から8月は、経済的な動きも大きく、
この時期に負債を整理する人もいるかもしれません。
また、人から大切なものを受けとったり、
貴重な人間関係や役割を「受け継ぐ」ことになったりするかもしれません。
9月から10月にかけては、ガツンと移動する時期となっています。
長旅や留学、長期の出張に出る人も多いでしょう。
また、専門的な勉強に勢いがつく時期でもあります。
学校に通ったり、短期的にスキルを身につけたりと
向学心が高まりそうです。
旅や勉強の目的意識もはっきりしており、
ただ体験したり学んだりするだけでなく
そこで獲得したものをすぐ現場で生かすチャンスに恵まれます。
10月から11月は「勝負」のタイミングですが、
ここでは、以前の人間関係や
「昔取った杵柄」のように、かつての経験が生きるでしょう。
10月は注目を集めやすい時期で、賞賛も集まります。
11月は特に、スピード感のある挑戦の時期です。
大きなチャンスが巡ってくる可能性もあります。
12月になると、非常にスケールの大きな「未来」が
視野に入ってきそうです。
遠い将来を見越して戦略を立てよう、という意志がわいてきますが、
そんな「戦略」を立てて、それに必要な態勢を整えるために、
この12月から2014年の7月までという、結構長い時間が提供されています。
挑戦的に「未来」を見据えていける時期です。

愛情関係については、
「現実的」かつ「官能的」な時期となっています。
たとえば、恋愛がスタートするときには、
相手の美しさや魅力だけが目に入りますが、
一緒に過ごす時間が増えるほどに、
お互いの生々しいクセや現実的な欠点が見えてきます。
「トイレに行けばおならもする」というような現実感が出てきたとき、
そこに、一時的な恋愛感情の盛り上がりに終わらない、
人生を共有する手掛かりが発生するわけです。
生身の人間であることの受容と、
愛の世界で二人のあいだにある距離が消え去る瞬間とは
並行してやってくる、とも言えるかもしれません。
既にパートナーがいる人も、あるいは、今はフリーでこれから相手を得る人も、
この下半期から一年ほどの中で、
相手という存在をごく現実的に掴み、触れ、
いつのまにかお互いになくてはならないものとなっている、
というそのプロセスを、生活全体で歩んでいくことになると思います。
愛に追い風が吹くのは7月と10月から11月頭です。

2013年下半期から一年ほどの中で、
今まであなたを見てくれていた人たちから、
一対一の「評価」を受けることが増えると思います。
そうした人たちがあなたを見込んだ上で、
「こっちに来てみませんか?」「あそこへ行ってみませんか?」
などと声をかけてくれるかもしれません。
この誘いが、前述の「虎穴」に入っていくきっかけとなりそうです。
「誘い」は、報酬や、時には名誉の形で与えられる気配もあります。
特に自分を見込んで、貴重な場を提供してもらえるとき、
私たちは「なぜそんなことを?」と、ちょっと警戒します。
でも、この時期あなたにとって「無償の、純粋な好意」と思えることが
相手にとってはあくまで「自分自身のため」であり、
ごく利己的な選択であるようなのです。
つまり、相手は相手自身のために、
自ら評価したあなたを、一蓮托生のパートナーと捉えているわけです。
そんなわけで、「虎穴」に入ってゆくとき、あなたは一人ではないかもしれません。
この時期は特別に、あなたと「あなた以外の誰か」の間のへだたりが
曖昧になり、あるいは消失しやすいタイミングなのです。