天秤座の今年の占い

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「しがらみ」は一般に、悪いものと考えられています。
この言葉はもともと、水の流れをせき止めるために、川の中に設置した「柵」を意味するのだそうです。杭を打ち込み、横に竹や木の枝を渡して、水の流れを遮るのです。このことから、「さまたげるもの・まとわりつくもの・流れを遮るもの」の意味で使われるようになったということです。
「自由に生きていきたいが、いろいろなしがらみがあって、そうはいかない」といった言い方は、自分という水の流れがせき止められている、というイメージを含んでいるのだなと思います。

私たちは基本的に、時間の流れの中で、世の中をどんどん「流されて」いきます。
ですが、年齢を重ねるにつれて、あっちの人のお世話になり、こっちの人の恩義を受けて、だんだんと「素通り」できない場所が増えます。
人生を先に進めば進むほど、「しがらみ」が増えて、あちこちで立ち止まることを余儀なくされます。
こうしたことを「不自由だ」と感じるために、「しがらみ」は悪い意味で用いられるのでしょう。
でも、もし一切の「しがらみ」がなかったら、どうでしょうか。
その人生は、他者との関わりの薄い、助け合いのきっかけの掴みにくい、とても孤独なものと言えないでしょうか。
たとえば「しがらみ」のないドラマというのは、多分、ほとんど存在しないだろうと思います。しがらみがなければ、面白くないのです。
人と人とが気持ちによって結びつき、お互いをとてもよく覚えていて、お互いの心を大切にする時、そこには何かしらの「しがらみ」が生じるのです。
そうした「しがらみ」やディレンマの中からしか、生まれてこないものがあります。
人が一生懸命になり、あれこれアタマを使い、あちこちで相談したり、心の中で気持ちをこね回したりしながら「道を見つけよう」とするのは、「しがらみ」があるがゆえです。

2023年の天秤座の世界では、「しがらみ」が新しい、より前向きな意味を持つことになりそうです。
自分一人ではどうにもならないことがあり、相手一人でもどうにもならないことがあって、お互いにどうにもならない中で手を差し伸べ合い、差し伸べ合った手が複雑に絡み合いながら、新しい世界を創り出します。
たとえば私たちは日々、他人との関わりをお金やお礼などで「清算」していきます。モノをもらったらお返しをし、あるいは対価を支払って、その都度恩義をリセットするのです。
ですが「しがらみ」の中では、関係を清算できません。
私たちはお金や言葉で清算できない繋がりの中で、頼ったり甘えたりし合いながら生きています。そしてそれこそが、本当の人間関係なのだと思う向きもあります。利害関係でもない、支配関係でもない、清算できない関係を生きることにこそ、価値や意義がある、という考え方は厳然と存在します。そうした関係の中では、たとえば「なぜ今、自分を助けてくれるんですか?」と尋ねても、論理的な説明は返ってきません。自分が誰かに力を貸す時も、論理的には説明しきることができません。説得できたとしても、その根幹は理屈ではできていないのです。
少なくとも2023年の天秤座の世界では、そうした関わりが大きく育ち、複雑化し、深みと厚みを増します。