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蝶々はきれいだけれど、蛾は苦手
という人は、少なくないと思います。
同じような形の虫なのですが
イメージは明らかにちがいます。
でも、他の文化圏では
蝶も蛾もおなじ言葉で言いあらわし、
イメージにも特に区別がないところもあるのだそうです。
言葉と観念の結びつきは、
そんなふうに、けっこう、あやふやです。
平安時代の物語などを読むと
よく、祈祷の話が出てきます。
人が病気になると、
祈祷をして治そうとするのです。
現代的なまなざしで見ると、
有効な医療がないために、
なすすべもなく呪術的な方法にすがるしかなかったのだろう
というふうにも見えるのですが、
もしかしたら、病気というものの捉え方自体が
まったくちがっていたのかもしれない、
という気もします。
つまり、現代の私たちは、
病気を、身体という物理的なものの異常と考えますが、
昔の人から見ると、病気は「身体」の問題ではなく
もっと別の現象だと見えていたのではないかと思うのです。
これは、単に「科学が発達していない時代の迷信」と
わらうこともできません。
というのも、現代でも、
あくまで身体的な病気を精神論で否定したり、
ブラックボックスに入れて怖れたりすることは
珍しくないからです。
そんなふうに、
新しい言葉や知識に照らされると
そこにあったものが全く別の意味を持つようになる
ということは、よくあります。
モヤモヤと悩んでいたことに「名前」をつけてもらったとたん、
「そういうことだったのか!」と落ち着いた気持ちになれる
という現象が、人の心にはよく起こるのです。
場合によっては、
問題が解決したわけでもないのに
「そういうことが世の中にはけっこうあって、
それにはちゃんと名前もある」
と解っただけで
悩みがごく小さなものになってしまう
ということすらあります。
言葉や概念が「器」のような機能を果たして、
置き所の無かった思いが、置き場所を得る
というようなことなのかもしれません。
あるいは、自分だけの責任でそうなっているのかな?
と思えたことが、
自分だけのものではなかった、ということがわかって、
自責の念から解放される、
といったこともあるのかもしれません。
2016年は、星座を問わず、
9月を境に流れが大きく切り替わります。
天秤座は9月以降、
「主役」といっていいような、
重要な人生の転機を迎えることになるのですが
その手前に置かれている9月までの時間、
上記のようなことを経験することになるかもしれません。
すなわち、自分の過去や内なるものについて、
新しい言葉を得て、
ここまでの人生を再定義できる、ということです。
あるいは、長いこと慢性的に抱えてきた問題や疑問、テーマに関して
まったくちがうアプローチが可能になるのかもしれません。
もっと言えば、
自分でどうしてもゆるせなかったものを
「ゆるす」「救う」ことができるようになる
と言ってもいいかもしれません。
誰もが多かれ少なかれ、
心のどこかに、「救われない」状態になっている部分を
抱えているものではないかと思います。
たとえば、
自分で自分に大きな期待を寄せながらそれに応えられないとか、
現実に起こっていることをどうしても受け止められないとか、
自分を守るために分厚すぎる鎧を着込んで動きにくくなっているとか、
「内なる他者」というゆがんだ大きな鏡を覗き込み続けているとか、
誰かの間違った言葉に傷つけられ続けているとか、
悔やみ続けていること、悩み続けていること、
自分や他人を許せずに責め続けていること、
言い訳をし続けていたり、
ずっと「自分が正しかったのだ」と自分で自分を説得し続けているような部分、
先に進みたいのにそれをなぜかさえぎってくるもの、
怖れ、怯え、嫉妬、コンプレックス、怠惰、怯懦、
依存、罪悪感、自己否定など、実に様々なものが考えられます。
普段はそうしたものを、心の奥深く、ジャマにならないところに
「秘めて」おけるのですが、
人生の大きな転換点に立ったり、
思い切った飛躍をとげようとするときなどには、
それらを「秘めて」おくことができなくなります。
それらと向き合い、自分を何らかの形で「救う」ことなしには、
前に進むことができない
という場合が、あるものではないかと思うのです。
「救う」などという言い方は、
少し大仰だと思われるかもしれません。
自分には「救われなければならない部分」などないぞ、
と感じる方もいるでしょう。
その場合はもしかすると、
自分以外の誰かを「救う」ことになるのかもしれません。
本当に誰かのために役に立てる、という機会は
人生の中で特別な意味を持つものだと思います。
誰かを「救う」経験は、人生の宝物となったり、
人生を支える大事な柱の一つとなったりすることもあります。
その一方で、
ひとつの言葉を得ただけで
世界の見え方が変わり、
新しい扉が見つかるような「心の変化」を
これから、体験する人もいると思います。
たとえば、自分でずっと
「自分の悪いところ」だと考え続けていたことが
「悪いところ」ではなく「弱いところ」なのだ
と解る、というようなことです。
これが解ると、
「悪をただして善にする」というアプローチから、
「弱さを守って強くなる」というアプローチへと
シフトできるようになります。
「悪さ」だと思っていたときには、
自分を責め続けていたけれども
「弱さ」だと捉えると、
責めるのではなくむしろ、
あたたかく理解し、かばうのが妥当だ
というふうに、考え方が変わるわけです。
これだけでずいぶん、状況が変わるでしょう。
こうした変化は、他人からは見えにくいものですが、
自分自身にとっては、驚天動地の変化となることもあります。
世界全体が全く違った色合いに見えてきて
人生が変わったりすることもあるものです。
さらに、こうした変化は、
他者との関わりに不思議な変化を呼び起こします。
因果関係はよくわからないけれども、
失われていたコミュニケーションが甦ったり
いきなり歩み寄りが起こったりする場合もあります。
人からは見えないはずの変化が
なぜか、他者を変えてしまう
ということが起こるのです。
2016年秋までに天秤座の人が体験することは
いくつかの意味で「不思議さ」を含んでいるでしょう。